top of page

​輸出に取り組むひとびと

令和4年産の長野県農産物輸出額は20億1,450万円(前年比114%)となり、平成25年に調査を開始して以来、最高額となりました。ここでは会員の輸出への取り組みや、抱える課題等を紹介します。

長野県東御市の3人の生産者が立ち上げ、6.5トンの県産米輸出からスタートした風土Link株式会社。風土Linkという社名には、コメをはじめとする農産物、農業、食文化、気候、日々の暮らしなど信州という地に育まれた様々なものを、仲間とともに世界につなぎ、未来に守り継ぎたいという思いが込められている。
スタートから14年経過した2024年現在、48名の農業関係者が参加し、2023年産の県産米を700トン超輸出する企業に成長した。笹平代表取締役社長は、輸出米の生産を行う仲間を増やすため、行政が主催するセミナー等で呼びかけを行う。

「風土Linkの強みは大手の輸出事業者とタッグを組んでいること、また長野米ブランドを大切に育てる取組を心掛けていること。猛暑や水不足の影響で名だたるコメの生産地が品質を落とす中、長野県産米は一等米比率の高さを維持しています。品質の高さを売りに、ぜひ風土Linkへの加入を通じて県産米輸出を検討してほしい。」

また彼らは、輸出先国の現状視察を行う活動にも積極的だ。2024年に訪れた台湾では、県産米の現地輸出業者との意見交換を通じ、台湾市場における県産米の評価、多様な販売ルートにおける認知度向上の取組、消費者に訴求できるポイント等を研究した。
春節商戦を狙って開催した県産米輸出拡大フェアでは、消費者との直接的なコミュニケーションを通じて、産地長野の豊かな自然に育まれた県産米の魅力を存分に発信した。

「台湾の人が日常的にどのように米食を取り入れているかを理解し、アピール方法を模索したい。」
取締役の白倉氏は、台湾市場における県産米輸出拡大に意欲的な姿勢を見せる。少子化により日本国内のコメ消費が落ち込む中で、彼らは生産者の力を結集し、コメの輸出という新たな可能性に賭けている。


風土Link株式会社
長野県東御市八重原1588
http://fudolink.co.jp/

“信州の農業”と“世界”を繋げたい

風土Link株式会社(東御市)/ 品目:コメ

長野県のソウルフードの一つ、おやき。一口におやきと言っても、県内にはさまざまなタイプが存在することは有名だ。生地の作り方、調理法、具材のバリエーションも豊富で、好みにぴったりの一品を探す楽しさがある。
数ある老舗のなかでも、長野市鬼無里に本店を構えるいろは堂は、おやきを海外に発信している。これまでも県が企画する海外催事に意欲的に参加してきた。
が、諸外国におけるプロモーションはそう簡単ではないようだ。パッと見て何物か分からず、味を想像してもらうのが難しい。「中に野菜が入っている」、「温めればすぐに食べられる」、「スナックに最適」など試食や販売補助の手が欠かせない。また、アジアにはおやきに似た屋台フードが数多くあり、非常に安価。地域によっては厳しい場面もある。
しかし伊藤社長は笑って話す。
「でも長野県の文化を紹介する時に、おやきがなかったらちょっと寂しいでしょう。オールジャパンのなかの長野。長野におやきありと伝えたい。」

いろは堂の海外初出展は、2012年のタイの首都バンコクだった。
「バンコクに住む日本人の多さに驚きました。懐かしがって大勢の方が買ってくれました。」
2014年シンガポールの催事でも好評を博した。2018年には長野県が企画したハワイ「長野フェア」に参加。実演販売にて出荷分をほぼ完売し、継続取引につながった。
「思い切って海外に出てみた事が、自信や視野を広げるきっかけになりました。」

コロナ禍においては、現地におやきを熟知した販売担当の派遣ができず、また、試食の実施も制限された。ニーズに合った商品開発のほか、商品の魅力をどのように伝えていくかが大きな課題だったと伊藤社長はこぼす。
とは言え、片時も立ち止まってはいない。国内の催事や商談会に積極的に参加し、通信販売にも力を入れた。外国語対応のホームページではおやきを紹介する動画を公開。また、長野市内に新たなおやきの発信拠点として、2022年には工場併設の店舗「OYAKI FARM」をオープンした。
「伝統」の言葉が持つある意味保守的なイメージとは裏腹に、いろは堂は前進を続けている。


有限会社いろは堂
鬼無里本店:長野市鬼無里1687-1
https://www.irohado.com/

OYAKI FARM:長野県長野市篠ノ井杵淵7-1
https://www.irohado.com/f/oyakifarm

「長野県の文化」を売り出したい

有限会社いろは堂(長野市)/ 品目:おやき

「海外の催事に出展し、現地のお客様にお買い求めいただいたのは、実は、“そば”より先に“つゆ”なんです。」
輸出担当氏は当時を思い出してそう語る。
「でも現地のお客様のカートには“そうめん”が入っていて、ううーん…と思いました。そばつゆですから、そうめんに最適の味とは言えません。“そば”をもっとアピールしないと、と感じました。」

日本食は海外でも人気だが、市民権を得たラーメンなどと違い、「そば(そば切り)」はまだあまり知られていない。
「これは何なのか」、「原料は」、「食べ方は」、「調理方法は」、「栄養価は」など、丁寧に説明しなければ現地のお客様は試食もせずに立ち去ってしまうこともある。

おびなたは信州戸隠の美しい自然の中に工場を構え、主にアジア各国に乾麵を輸出している。
シンガポールで出展した催事ではそば打ちのパフォーマンスを披露し、打ち立てのそばを試食提供した。
見本市や、海外バイヤーとの商談会にも積極的に参加している。信頼できるパートナーとつながり、定番化した商品もある。

ただ、“日本食のそば”をそのまま展開していくには難しさを感じていると言う。現在かかえている課題は、「現地のお客様に浸透させるにはどうしたらいいか」ということだ。
もちろん、日本そばの旨さを海外にも伝えたい。しかし嗜好や食文化は国ごとに違い、日本式の食し方だけ正しいものとして押し付けるのは柔軟さに欠ける。現地のお客様の味覚に合うレシピ、市場のニーズに合致する新たな形状、パッケージ開発など、さまざまに模索中だ。

海外市場に売り込んでいくには、現地へ赴き、現地のマーケットを知ることが重要だと担当氏は話す。現在のコロナ禍ではままならない状況だが、今ある販路を大切に、積極的にアピールしていきたいと考える。
「調理動画の制作を計画中です。」
そば切り発祥の地といわれる長野県。「日本三大そば」を誇る戸隠から、世界に売り込む努力は続く。


株式会社おびなた
〒381-4193 長野県長野市戸隠2640
https://www.obinata.co.jp/

伝統をどう変化させていくか

株式会社おびなた(長野市戸隠)/ 品目:そば

2022(令和4)年10月、協議会では台湾から本県へバイヤーを招へいし、農産加工品を中心とした商談会を実施した。2023(令和5)年1月には台北市 微風廣場(微風超市/Breeze Super)にて長野物産展を開催。一部の事業者は渡航し、店頭にて実演販売を行った。
マルヰ醤油株式会社は物産展事業に参加した事業者のうちの一社だ。

マルヰ醬油は農業がさかんな中野市にあり、主に味噌や醤油などの調味料を製造販売している。北米やシンガポール等に輸出実績があり、県の主催する海外バイヤー商談会へ積極的に参加。コロナ禍ではウェブを用いたプロモーションにも挑戦した。
台北には今回が初出展となった。物産展は3年ぶりに移動制限のない春節シーズンにあたり、客の動向が読めないと言われるなか、外国語対応チラシの作成や試食方法の検討など、出展準備を進めた。

「国内でも多数実演販売に出向くが、微風さんには驚かされた」と、民野社長は振り返る。売り場作りにおける熱量が素晴らしく、対応には出展側の予想を上回る柔軟さがあったと語った。
恥ずかしながら事務局を含め出展側は、当初「売り場を用意していただいた」とだけ考えていたのだが、催事が始まってみれば、微風から試食方法の提案や、それに適した備品の貸し出しなど、非常に親身に相談に乗っていただいた。
また、「この商品で惣菜部とコラボできないか」とも言っていただき、急遽本社にレシピを送付してもらう一幕も。今後、微風とのコラボレーションが実現したらこの上ない。期待に応えるためにも、再度訪台し関係強化に努めたいと意気込む。

台湾への渡航期間中、日程をやりくりして意欲的にマーケットリサーチを行っていた民野社長。夕食で食べた調味料を気に入り、あちこち探して購入したそうだ。県産農産物と発酵食品を掛け合わせた商品案など、常に次の一手を考えている。今回の台湾渡航で得たアイディアが新商品に活かされ、海外の顧客に向け、再び海を渡る日が来るのかもしれない。


マルヰ醬油株式会社
〒383-0021 長野県中野市西1-5-5 
https://maruisyoyu.com/

台湾 店頭プロモーションを通じて

マルヰ醤油株式会社(中野市)/ 品目:醤油・調味料

bottom of page